区分所有法第25条に定める管理者に、マンション管理士などの専門家が就任するケースが今後増えていくんではないかと考えています。その根拠は、国交省が平成20年4月に発表した「マンション管理の新たな枠組みづくりに関する調査検討報告書」で、マンション管理の問題点として以下4つが挙げられており、ここから紐解くことが出来ます。

  1. 役員のなり手不足
  2. 組合活動に無関心な者の増加とルール違反居住者の増加
  3. 管理費等の滞納者の増加
  4. 修繕積立金不足

10年前から指摘されている問題点が、今もなおマンション管理の課題として、そのまま残っていると感じています。特に「役員のなり手不足」については、空き家から賃貸化が進めば必然的であり、賃借人が管理規約を守るのが大前提だとしても、マンションオーナーで無いぶん、意識的には希薄になってしまうと思います。すべて賃貸化によるものとは言えませんが、それが「ルール違反居住者」が増えてしまう要因になっていると考えています。

管理会社が何とかしてくれる?

これらの問題点に対して、管理会社が解決してくれる可能性は低いと言わざるを得ません。なぜなら管理会社は、役員のなり手不足などのソフト面のサポートについては、ほぼ無力であるからです。やれる事と言えば、役員改選前の候補者選びの際に、輪番役員への就任要請を電話連絡するくらいです。断られれば、次の輪番予定者に連絡することもあると思いますが、「高齢化」「夫婦共働き」「賃貸化」「外国人所有者」などにより、完全に役員をする人が居なくなってしまった場合に、なす術が無くなります。

それでも忙しい現代人の役員サポートが出来るように、Web理事会が開催できるような商品開発も進んでいますが、そもそも管理組合活動に無関心な方が増加傾向という事で、役員のなり手不足に対する有効な手段なのかと考えると、そうは言えないのが現状ではないでしょうか。

管理費等の滞納、修繕積立金不足も同様に、、

これらの問題もマンション管理組合が積極的に解決に向けて動き出さなければ、管理会社だけでどうにかなる問題ではありません。長期滞納者は管理委託契約上、管理会社から督促状を送るだけの事務的な督促となり、より回収が難しくなるため、弁護士に依頼するなど訴訟に頼らざるを得なくなります。また修繕積立金不足についても、長期修繕計画書の5年毎の見直しを確実に実施し、修繕積立金がどの程度足りなくなる恐れがあるのか、外壁修繕、防水更新、設備更新、配管更新など、明確な修繕実施時期を提案してくれる優秀な管理会社がパートナーとして存在してくれない限りは難しくなります。また、修繕積立金の値上げ提案も重要になってきます。まずは理事会で議論しなければいけませんが、その議論が出来るだけのサポートが管理会社に求められています。

マンション管理士に頼る

過去記事「区分法の管理者になる」にも書きましたが、役員のなり手不足や管理不全に対応するには、マンション管理士が管理者となり、組合運営を実施していくという方法があります。

マンション管理適正化法によれば、マンション管理士の業務は相談、助言、指導、その他援助をする事とあり、これまでは相談や助言に重きを置いた、いわゆる顧問としての役割が多かったと思います。ですが、これからはマンション管理士が積極的に組合運営を担わなければいけなくなる時代がやってくると考えております。

国交省においても、「マンションの新たな管理ルールの検討会」という有識者会議が平成24年~平成27年にわたって開催され、外部専門家の活用について議論されてきました。おもには外部専門家の管理者制度を採用している諸外国の事例を参考にしつつ、不正や金銭事故をふせぐための機能を、どのようにマンション管理組合に持たせていくか、という内容になっています。

そうした検討を経て、平成28年3月に国交省から、「マンションの管理の適正化に関する指針」が告示され、平成29年8月に、標準管理規約が改正されました。

外部専門家を役員として選任できることとする場合の、規約条文が盛り込まれているのが新たな内容になっています。

国のこうした動きは、マンション管理不全によることの住環境と都市環境の低下を懸念しているからであり、より一層のマンション管理士の活躍を期待しているものと考えることができます。