10年以上前から書籍などで指摘されていた問題ですが、マンション管理の現場では依然として、区分所有者の高齢化、賃貸化などによる役員の成り手不足が深刻です。

多くの管理組合では、役員の選出方法として輪番制を導入していますが、前出の高齢化や賃貸化に加え、外国人を含む投資目的所有や法人の社宅利用などの部屋もあることから、役員就任引受けが輪番通りスムーズにいかず、人材確保に苦労しています。また、居住している組合員のなかには、もともとマンション管理運営に無関心な層が一定数存在すること(H30マンション総合調査:全体の1割が総会にほとんど参加していない)や、夫婦共働き・両親の介護、さまざまな病気療養等の理由から、理事会に出席することが難しい、として役員就任を断るケースも多くあります。(現場の肌感覚として多いです)

平成30年度マンション総合調査結果(区分所有者向け調査の結果より)

7➀管理組合の役員就任への対応(その1)全体の抜粋<世帯主年齢30~80歳、S44以前~H27以降竣工>

快く引受ける 順番が回ってきたら引受ける 他になり手がいなければやむを得ず 引受けない 不明
14.3% 60.7% 13.8% 5.9% 5.2%

このうち、80歳以上の組合員は27.6%の方が「引受けない」と回答しており、築年数別に見ても昭和44年~54年に竣工したマンションで、引受けないとした方が12~14.5%の結果で、高齢や高経年マンションにおいて人材が不足していく傾向にあることがわかります。

築浅から高経年マンションを含めて全体数でみれば、75%の組合員が役員を引受けてくれるので、安心な数字のように見えます。しかし、ただ漫然と役員の業務をこなすのでは無く、管理費・修繕積立金の使途や建物の将来を考える、といったことをもっと真剣に当事者意識を持って管理組合を運営していかなければ、いずれ管理不全マンションに陥ってしまい、資産価値もどんどん下がってしまうことになると思います。

「快く引受ける:14.3%」の方々のなかには、マンションの資産価値向上に熱心に取り組んでおられ、実際にお会いするとその気迫たるや凄まじく、強力なリーダーシップで管理組合を引っ張っていくタイプの方がいると思います。しかし、現実には役員を引受けてくれる75%の多くの方が、管理会社に任せておけば安心という感覚であると思われ、これは良くない傾向にあると考えています。

管理会社は営利目的で管理運営補助に関するサービスを提供しているに過ぎず、組合員の目線で、このマンションの将来は~、と導いてくれるわけではありません。

管理会社としても、あくまで主体は管理組合にあるものとして、サポート役に徹しているからです。長期修繕計画書の5年毎の見直しも時期がくれば、その「案」を提出してくれますが、それをもとに審議して修繕積立金の見直しや計画修繕工事の実施時期を、まずは理事会で審議していかなければいけません。それをせずに惰性的に役員任期をこなしていった時、高齢化・高経年マンションの問題に当たり、役員確保の困難や積立金不足が顕在化してくるのです。

これからのマンション管理をどうすれば良いか?

平成24年から、国交省において「マンションの新たな管理ルールに関する検討会」が開かれ、有識者たちによって、第三者管理方式について議論されてきました。

その結果、平成28年には、理事会のなかに外部の専門家を役員や管理者として入れることが出来るような標準管理規約が公表されました。

私も昨年から、小規模マンションの管理者就任を引受けたり、外部の監事を引受けたりするなど、顧問契約や規約改正のみのスポット業務以外にも活動の場が増えてきているのを実感しています。

これからもっと外部の専門家による、役員引受けなどのケースが増えてくると予想しています。

(2020.10追記)

輪番制がうまく機能するとしても、つぎに役員の引継ぎ問題を考える必要があります。

2年任期の理事の半数を改選し、かつ各種資料や書類もデーターベース化して合理的な組合運営を目指していきたいですし、理事会と組合員の双方向コミュニケーションの場も考える必要があります。

コロナウィルス等の感染症予防対策で、組合員同士が集まる機会が失われてしまったいま、これをどうするかが最も重要な課題となっています。