法令集
自力救済とは、法の手続きによらず自己の権利を実現すること。入居者が家賃を払わないからといって、大家が勝手に部屋の鍵を変えて、家に入れなくしたり、荷物をすべて処分してしまったりすることは、自力救済の禁止に抵触し、締め出された入居者から損害賠償を請求されてしまいます。

マンション管理組合が、電気料金や水道料金を一括して支払い、各組合員に個別請求をしている場合で、滞納者に対して、ただちに電気・水道の利用停止をしたりすることも、自力救済の禁止にあたるといった判例があります。(東京地裁H21.5.28判決)

限度を超えない範囲で例外的に許される場合には、「緊急」「やむを得ない特別な事情が存する」といった余程のことが無いかぎりは認められるのは難しそうです。

ただ、組合の理事長などからは、未収状況をなんとかしたいという強い気持ちから、「実力行使にいきたい」という話をよく聞きます。お気持ちはよくわかりますし、私も実務をおこなっているうえでは、法の手続きによったのでは、時間ばかりかかってもどかしく思うことは多々あります。
しかし、法治国家である以上は、法に従って生きるしか無く、弁護士の先生と協業しながら粛々と法的手続きをして参ります。

マンション管理費等の滞納督促について

  1. 請求書および電話による督促
  2. 督促訪問(管理会社または理事役員の複数名による)
  3. 内容証明郵便の発送(遅延損害金を付加する旨、法的処置を検討する旨を明記)
  4. 総会決議のうえ支払督促の申立て(異議申し立てが出された場合は、通常訴訟へ移行)
  5. 和解または強制執行
  6. 上記でも解決しない場合には区分所有法59条競売を検討する

以上のステップを踏んでいきますが、対応は早ければ早いほど良いと思われます。

未収金額がふくらんでくれば回収が難しくなりますし、5年で時効にかかります。

管理会社に管理委託を任せている」から安心、と思われるかも知れませんが、国交省作成(H30.3.9)のマンション標準管理委託契約書の条文は以下のとおりとなっています。

(管理費等滞納者に対する督促) 抜粋

第10条 乙(管理会社)は、第3条第1号の業務のうち、出納業務を行う場合において、甲(管理組合)の組合員に対し、別表第1 1(2)②による管理費、修繕積立金、使用料その他の金銭(以下「管理費等」という。)の督促を行っても、なお当該組合員が支払わないときは、その責めを免れるものとし、その後の収納の請求は甲(管理組合)が行うものとする。

2 前項の場合において、甲が乙の協力を必要とするときは、甲及び乙は、その協力方法について協議するものとする。

つまり、管理会社は督促業務を実施さえしていればよく、未収金の回収までは契約に入っていないという事です。ちなみにマンション標準管理委託契約書コメントの10条関係は以下のとおりです。

 弁護士法第72条の規定を踏まえ、債権回収はあくまで管理組合が行うものであることに留意し、第2項のマンション管理業者の協力について、事前に協議が整っている場合は、協力内容(甲の名義による配達証明付内容証明郵便による督促等)、費用の負担等に関し、具体的に規定するものとする。

管理会社の委託契約書の記載は各社においてそれぞれですので一度、契約内容の確認をすることが良いと思われます。確認をしたうえで、理事会で未収者への対応方法を協議していきましょう。

漫然と管理会社まかせにしておく、というのでは絶対にダメです。形だけの督促をして、債務不履行を免れているケースが散見されているからです。その場合、未収金はどんどん膨らんでいきます。

管理会社の協力を頂きながら、滞納問題を解決していくべきであり、協議に応じてくれなかったり、対応してくれない管理会社であれば、マンション管理士が相談に応じます。

滞納問題の解決は、とても労力が必要ですが早い段階ならばまだ少ないエネルギーで済みます。

頑張っていきましょう!